笑う門には福来る

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そうこうしているうちに、解剖する器具が配られ、あちこちで悲鳴が上がり始める。各ペアごとに解剖が始められたようだ。 トレイに載った器具がおれに回ってくると、これまた無言で福田へトス。 「いや、ほんとにやらないんかい。それでも男子?本当はついてないんじゃないの?」 福田は顔に似合わず下ネタまで網羅しているようだ。 「ああ、実はついてない。だからよろしく。」 「ウッソ!?オカマなの?」 「マジ」 「…確認するよ?」 「やめて。ついてる」 「いや、分かってるから!」 目の前で、盛大に吹き出す声が聞こえた。さっきの女子が、おれたちの会話を聞いていて笑ったようだ。 「何かあった?」 今度はおれがその女子に尋ねた。 「いや…ごめんね。フクが変な質問してるのに、宮門君が無表情で面白いこと言ってるから、我慢できなくて」 「質問ていうか、突っ込みね、私の場合」 福田がなぜか胸を張る。 しかし何だろう、この自分の中に発生した、明るい感情は。 自分の言動で笑ってくれる人がいた。それだけなのに、まるでスキップでも始めてしまいそうな、心が軽くなっている自分がいる。 そして、そんな自分の出現にとまどっている自分もいる。 「お、今はなぜか動揺してるね?」 福田がおれの表情覗き込んでいる。おれの感情の変化を、機敏に察しているようだ。 「私が宮門君とお笑いやりたいって言った意味、分かった?宮門君のその冷たさと無表情が、人を笑わすための武器になるんだよ」 冷たさが、武器になる? これがお笑いの力か…悪くない、な…
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