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はじまり
Ⅰ-Ⅰ
宮殿の物置となっている部屋に、数人の男たちが詰め話をしている。男たちは皆、王宮の役人の制服である白いカッターシャツに、青藤色のジャケットを合わせ、下は黒いズボンを穿いている。そして白菫色の髪とサファイアのような青い瞳を持つ。
「陛下がようやく動きだすらしい」
一人の男がそう告げる。
「ようやくか。悠長なことだ。まあでも、気づかれることはないだろう」
別の男はクスリと笑う。
「あぁ。もし気づかれても、陛下に罪を被せてしまえば……」
「陛下が責任を感じて、自害をするか王位を失脚すれば好都合なんだが……。そのようなことにはならないだろう」
「陛下は図太い方だからなぁ……」
「元はと言えば、この都市の歴史を隠していた王家一族に責任があるのだ。その責任から逃れ、今までのうのうと王位を継承し生きているとは。しかも住民には何も知らせず、ひた隠しにするなど、許されることではあるまい」
「どうやら陛下は、とある娘に協力を求めるようだ」
「たかが小娘に何ができる。いくら王命とはいえ」
男は馬鹿にしたかのように吐き捨てる。
「ただ娘は、あの能力を持っているとか。他の魚類を味方に付けるようなことになれば……」
「心配するな。万が一の時は小娘もろとも始末をすれば良い……。いくら陛下を信じている住民も、そうなればいつまでも、陛下に政を任せている訳にはいかまい」
数人の男は大きく頷く。
そして今まで一言も発してなかった男に、あることをするようにと命を下した。
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