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ヒールの音を響かせ駆け寄るわたし。
それでもまだ動けずに呆然となるパパ。
パパの前に立ち尽くす女。
二つの想いが立ち止まる。
15年前のまま。
さっきまであんなに言いたいこと
いっぱいあったはずなのに
パパの目に溜まって
堪え切れずに流れ出す光を見て
言葉を無くした。
震える声で小さく「夏実…」と呟いた
そのパパの目の前で
送られてきた離婚届を
ビリビリに破いた。
「アタシ…パパと離婚する気はないから」
持っていた鞄を床に落とし
わたしを抱きしめたパパ。
「どうして…」とーーー。
「アタシのわがままも許して。…アタシ…健介さんの妻だから」
パパの耳元で溢れた言葉にハッとなる。
何年ぶりかに言ったパパの名前。
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