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そこからの記憶が飛んでいた。
在宅を希望したこともあり病院からは
車椅子を用意してもらっていたパパ。
もう一人では歩くことさえ
辛そうなパパ。
それでもアタシにも桃子にも
笑顔で接してくれる。
その笑顔さえも苦しく悲しみを誘う。
桃子もパパのすがたを目の当たりににして
一瞬固まった。それでも笑顔を絶やさない。
「パパお帰り!ねえ、パパ、欲しいバッグがあるんだけど、今度連れてって」
「アンタ、パパの顔見るなりおねだり?」
「いいよ、ママ」
「いいよねえ、パパあ?」
心から嬉しそうに桃子とアタシを見る目は
穏やかだった。
夕食を済ませ、薬を飲ませ
10時過ぎにはパパを二階の寝室に
桃子と二人で連れて行き寝かせた。
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