最期のひとこと

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1日1日とパパと過ごせる時間がなくなっていく。時間と追いかけっこしても勝てるはずもないこと分かってはいても… それでも悲しみは増していく。 パパの自宅療養が始まって 二週間になる頃の昼下がり。 珍しく雪も止んで空は青く澄んでいた。 「今日はパパの初恋の話聞かせて」 と残り少なくなった時間を戻すように 真っ青な空の下でふたり縁側に並んで コーヒーを傾けた。 「初恋?」 パパの左側でパパの肩にもたれる。 「うん」 「初恋か…」 そう言って空を見上げた瞳の奥に彼女はいた。わたしにはそう見えた。 「伊織が初恋だった」 「伊織は高校の吹奏楽部の後輩で…見た目はママと瓜二つだったけど、伊織はママみたいには明るくなかった」 「いつも目立たないところでフルートを吹いてた。いつの頃からか僕は伊織をいつも目で追うようになってた」
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