最期のひとこと

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「伊織が卒業して僕らは付き合うようになった」 「パパから告白した?」 「うん。でもちゃんとした告白でもなかった」 「どちらからともなく、いつも一緒にいた感じだった」 「でも伊織の家は旭川では老舗の和菓子屋、木村総本家」 「知ってる。いくつもお店あるよね。あそこのお嬢さんだったんだ。伊織さんって」 「そうなんだ、お嬢さん…だったから伊織か大学卒業と同時に結婚の申し込みに行った」 「でもうちは普通のサラリーマンの家で大きな会社の一人娘の伊織とは初めから無理だった」 「断られ僕がアパートに戻ると伊織が家出してきていた」 「駆け落ち?」 「それでも伊織は連れ戻された」 「何度連れ戻されても、それでも僕のところに来てくれた。何度目かの家出の時、伊織のお腹には二人の子供がいた」 声を詰まらせたパパ。
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