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「あの日、ママと会って…」
アタシの言葉もパパの言葉も曇っていく。それでもパパは自分の人生を締めくくるように一つひとつ大事そうに言葉を続けた。
「伊織が僕に『生きてよ』って言ってる気がした」
「アタシもパパに会ってなかったら…」
「きっと死んでた」
「テレビのニュースで報道されてるようにね」
「僕らは出会うべくして出会ったのかな」
「多分…」
冬の低い太陽がほぼ真南に来てアタシとパパ二人の顔を照らして、仄かに温かみを感じる。
木々や花々が太陽に照らされ生きられるように、アタシと桃子はパパの愛情に照らされ生きてこれた。
繋いだ手が溢れる想いを語り合うように強さを増していく。
「今日は温かいから少し散歩する?」
わたしの笑みにパパのいつもの笑みが応える。
わたしが車椅子を押して家の南側を流れる川沿いの道をゆっくり進み、昔桃子が小さかった頃家族三人でよくボール遊びをした小さな公園の滑り台の横のベンチに車椅子を止める。
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