最期のひとこと

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冬の太陽が少し西に傾いた頃ふと過ぎる思い。 冬が過ぎ、短い北国の春、そして夏、足速に過ぎていく秋。 できればパパにサクラの花を見せてあげたいとーーーー。 それでも私たち家族の思いとは裏腹に少しずつ弱っていくパパ。 「パパーっ!ママーっ!」 立ち漕ぎで手を振って土手を自転車で走ってくる桃子を見て、パパは右手を上げて振った。 その目は輝いていた。それは涙のせいでもなく、冬の陽のせいでもない。 そう感じた。 「パパ、今日、顔色良いね」 「桃子がいるからかな」
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