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ーー桃の家ってさあ、函館じゃ知らない人いないじゃん。
ーー夏実ん家って複雑なんだよね。父親だってホントの父親かどうかも怪しいなんてことも言ってたし。だからじゃないかな。
ーーアタシが夏実の立場だとしたら、やっぱりそんな根性ないもんね。
ーー仮に桃と結婚なんてことになったとしたら、やっぱり根掘り葉掘り聞かれるし、調べられるからね。
ーーいくら時代がって言ってもさ、無理だよ。世界が違うんだよ。アタシ達と桃じゃさ。
ーー今は子供だからいいけど、大人ってそうはいかないよ。
ーーだから…
ーー夏実のこと…そっとしてあげて。
ーーお願い…
「そう言われても、やっぱりママのこと諦めきれなかった」
珍しく先生がタバコを出して火を点けて大きく吐き出した。これまで溜めてきた想いを吐き出すように。
「隣でタバコ吸いながらビール飲んでたママに…結局俺は何も言えずにただ粉雪が舞い出した空を見上げてた」
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