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「ここからは聞いた話だけど」
「それでもいい。何も知らないより」
先生はそれでも悩んでいた。そしてタバコが消える頃、重い口を開いた。遠くで汽笛の音に混じって救急車のサイレンの音が聞こえた気がした。
「それからしばらくして…」
「ママはある人に出会いそして恋をして…桃子ちゃんが生まれたらしい」
「その人って?」
「そこまでは知らない」
「でも…その人とは妊娠が分かる前に別れて」
「その彼は姿を消したらしい」
「それでも自分のお腹の中に産まれた命を消してしまうなんてできずに…」
「一人で産んで一人で育てて行くって決めたらしい」
「ママって…強いんだね。アタシにはそんなことできないかも」
「その時ママが堕ろしてたらアタシ今居なかったんだね」
「その男の人のこと恨んでたとしても、お腹の中にいた桃子ちゃんには何の罪もないし、やっぱり自分の子供が欲しかったんじゃないか?」
「俺は男だから女の人の気持ち分かんないけど」
「桃子ちゃんならどうする?」
「ん…」
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