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雪を踏みしめる音に続いて
微かに遠くで聞こえるような玄関のベル。
鏡で顔をつくり
急ぎ足で玄関のドアを開ける。
ドアを開けると桃子は下を向いたまま
後ろで桃子に手を添え支える桃。
「ごめん…ママ」
声を震わせた。
頑張って笑顔で迎える。
「お帰り。今ちょうどパンケーキ焼こうとしてた。着替えておいで」
嬉しい気持ちと桃子にすまない気持ちの両方がそうさせる。
桃子は靴を脱いで揃えると二階に駆け上がった。
階段を見上げているわたしに桃が「懐かしかったよ、函館」とあの頃みんなで屯っていたファミレスの割引券を差し出した。
「分かってくれたと思う」
「ありがとう、桃…迷惑かけて」
「気にすんな」
「…」
上手く言葉にできない。
「じゃ」
「うん」
「ホントにありがとう」
「うん」
たいした会話もできないまま
桃は朝の冷たい空気の中に消えた。
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