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どのくらい眠れない時を持て余しただろう。
いつしか手を繋いだまま
向き合った格好で眠っていて
わたしの左手と桃子の右手は
お互いの思いを伝えたかったのだろう。
目覚めたのは昼過ぎ。桃子はまだぐっすり眠っているようで、そっとベッドから抜け出しリビングのテレビをつける。
わたしの正面にあるサイドボードの上には
家族三人で撮った数枚の写真。
写真の中のアタシは
これ以上ない笑みを浮かべていた。
桃子が三歳の時の七五三のお宮参りの帰り。
桃子の小学の、そして高校の入学式。
中学の入学式は、パパがシンガポールにいて
日本にいなかったから二人で校門の前で撮った。
「ママの玉子焼きが一番好きだよ」
そう言って七五三から帰って来てすぐ
わたしの玉子焼きをねだったパパ。
わたしが作る玉子焼きは砂糖いっぱい入れた
甘い玉子焼き。
桃子は「甘すぎてスイーツみたい」と好きではないけど、どちらかというと甘党のパパは日本にいる時は必ずねだってくれる。
そういえば高校の入学式では
新入生が入場してくる時
他のどの親御さんよりも早く目を潤ませ
父兄席でただ一人立ち上がって拍手し
周りの親御さんの顰蹙を買っていた。
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