桃の涙のわけ

3/14
103人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
7f3da3b4-bfe7-4d2a-8d55-6adcd5481d54 どこでどう狂ったんだろうな。      俺たちを乗せた列車のスピードが       どんどん速くなり       真っ二つになって いつしか見えなくなった。 あの夜、俺が夏実に「タバコくれよ」って         言ったの覚えてるか? 俺は高校もやめて、お前と、夏実と        生きて行くって      そう決めて公園に行ったはずなのに 結局何一つ言えずに        夏実は初雪に連れ去られた。 「夏実のことが好きだから俺と生きていこう」って、この言葉ひとつが言えなかった。 何年、夏実を探しただろう。 何年、夏実を思い泣いただろう。      悔しくて悔しくて…      夏実に何一つ言えなかった自分が。 中学の頃まではあんな日が来ることなんて         想像すらできなかったのに。
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!