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学生の頃の教科書。一昔前に流行したデザインの服。元彼がプレゼントしてくれた時計。もう交流のなくなった友人と、お揃いで買ったストラップ。
幼なじみの莉緒の部屋には、そういう物が山になって積まれている。そのうちゴミ屋敷の主になってしまうんじゃないかと私が危惧するくらいには、莉緒は片付けが下手だった。
ただ、物を捨てられないというわけではない。
その証拠に、第三者、たとえば私が「絶対要らない物だ」と指摘したのなら、それが何であっても莉緒はあっさり手放してしまう。
要するに、莉緒の何が問題なのかと言うと、要る物と要らない物を自分ひとりで判断することができないという点なのだ。
「これは?」
「要らない」
「これ」
「要らない」
「じゃあ、これ」
「要るでしょ」
半年前のことである。マンションの一室で一人暮らしを始め、親の目がなくなった莉緒の部屋が、案の定大変な散らかりようを見せていたから、二人で片付けをすることになった。片付けたところで、どうせまたいつかは汚くなるだろうというのはわかりきっていたのだけれど。
全て莉緒の持ち物だというのに、なぜか私が要る要らないの判断を下しながら、ゴミ袋に放り込んでいく。その作業の途中で、私は莉緒に聞いてみた。
「ねえ。どうして自分で決められないの」
莉緒は器用に片眉をつり上げると、ひとりごとのように呟いた。
「だって、考えるの面倒くさいんだもん」
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