公然と赦される痴漢

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ガタンゴトンと電車が揺れる中、 女子高生は思った。 このまま寄りかかりたいと。 ガタンゴトンと電車が揺れる中、 おじさんは感じた。 長い髪の当たる香りを。 女子高生は目を瞑った。 おじさんは一点を見つめた。 光る汗とあぶら。 彼はどこも見てはいない。 彼は、嗅覚と触覚でしか世界を語ることができなくなってしまった。 だが、彼女もまたどこも見てはいない。 滑る肌と掌。 その間も、女子高生は目を瞑ったまま、 ほくそ笑んでいるのだ。
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