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ⅩⅤ やってる事は新婚さん
私は今、新婚さん気分を味わっている。
……ごめん、意味わかんないよね。
今の状況を説明すると、椅子に座った私が料理中のルルを眺めてる。ラフな格好にエプロン装備で、料理自体も手際がいいという最強乙女。
私はどうなのかって?
料理は出来ます。但し、ルルみたいな包丁さばきは出来ません。だって、手の動きが料理漫画並なんだもん。
「……出来た。運ぶのを手伝って欲しい」
「あ、はーい!」
美味しそう……じゅるり。
お城で食べた豪華な料理は美味しかったけど、私はこういう家庭料理の方が好きかなぁ……落ち着いて食べられるのって良いよね。
「いつも自分で作ってるの?」
「ん……いつもはもっと適当。今回はあーちゃんが来たから」
私が来たから量が多いって事?
それとも、
「歓迎会、みたいな?」
「ん」
ルル、歓迎してくれてたんだね。
これは、頬が緩むのも致し方なしだよ!
「えへへ〜、ありがとねっ!」
最初は冷たい人なのかとも思ったの。でも、呼び方が「あーちゃん」だったり、部屋が空色で可愛い感じだったり、蓋を開けてみれば普通の女の子。
無表情なのには訳があるのか無いのか……あるとしたら、いつか話してくれるのかな……?
「……何か付いてる?」
「な、なんでもないよっ! 料理出来るなんて凄いなって思ってただけ!」
「そう……時間がある時になら教える」
「うん、その時はよろしく……」
図らずも料理を教えて貰える事に。
まあ、いつも作って貰うのは悪いし、ルルの好きな料理とか味付けを覚えたら私にやらせて貰おっと。
「それじゃ……頂きますっ!」
◇◇◇
あ〜、美味しかったー。
満腹になった今はお風呂でまったりタイム。特待生は部屋に付いてるとか……いたれりつくせりだね。
別に大きいお風呂もあるらしいから行ってみたくはあるんだけど、女の子しか居ないのに行っていいのかなーっていうのと、学校で自己紹介もしない内に行くのはあれかと思って。
「まだ慣れてないし……」
「何に?」
横からかけられた声にビクッとする私。
勿論この体に、とか言えない。
それ以前に、
「る、ルル!? なんで居るのっ!?」
「お風呂に入りたかったから」
「いやでもっ、私居るし! お願いっ、せめてバスタオルだけでも巻いてっ!」
「? 必要ない。あーちゃんは女の子」
くっ、これ以上無い正論ですねっ!
落ち着かないと……うっかり興奮しちゃったら不味い。こういう体質って言えばなんとかなる可能性もある。だけど、何とかならなかった場合に困るし、とにかく全力で落ち着こう。
目の前にルルが座り、マシュマロのようなおっぱいが惜しげも無く晒されているこの状況。どうしよう、耐えられる自信が全くありません。
こんな時は別のことに意識を向ければいい。
明日から通う学園の事でも考えよう。
編入生だからみんなに囲まれて色々聞かれたり、特待生であることを妬まれたりしそう。後は女の子ばっかりなら目の保養になるよね。
それで興奮したら休み時間にフィリスかお姉ちゃんにしてもらったり……放課後の教室とか、体育倉庫とかでしてみたい。
こう、誰か来るかもしれないっていうスリルで興奮……はっ!?
どうしてそっちに行っちゃうかなぁ……もうアレがこんにちはしてるんだけど。見つかる前に隠さ――
「あーちゃんに何か生えてる」
「手遅れだった……」
そんなにじっと見ないで、恥ずかしいから。
むしろ元気になっちゃってるから。
「ちょっと……かくかくしかじかでね」
「ん……体質で興奮すると生えるようになった?」
「そうそう。……えっ? なんで分かったの?」
私、「かくかくしかじか」ってそのまま言ったんだよ? どうすればそこから分かるの?
「なんとなく」
「ルルのなんとなくが高性能過ぎる」
「そんなことより、」
「そんなことかなぁ……」
「触っていい?」
マイペースですね。……で、どう答えればいいと思う? 触っていいって言ったら物凄くエッチな展開になりそう。ダメって言ってもまた言い出しそう。
……うん、ここは逃げで。
「恥ずかしいから、ごめんね」
「……分かった、また今度にする」
と言いつつ顔を近づける。
ちょっと? また今度でもおかしいけど諦めたんじゃ?
「ねぇ、何してるの?」
「触らないから平気。見てるだけ」
「さいですか……」
屁理屈でもゴリ押しすれば立派な理屈。
私が折れるしかない……興奮なんてしないよ?
………………。
お風呂から上がるまでじっくり観察されました……あそこまで行くと触られる方がまだいい気がする……
さて、そのルルさんは……
「ルル? なんか、ちょっと驚いてない?」
「ん、結構」
「何かあった?」
「……思ってたより色っぽい」
私が? えぇ……? 私は色っぽさとは無縁じゃないかな。あるとしても可愛いとかそっち系。
とりあえず、鏡を見て……すぐに理解した。
男のパンツって、黒いのは地味じゃん?
だから、その時のイメージで黒い下着をいっぱい買ったの。でもさ、よく考えたら女の子の黒ってエッチじゃない?
なんで、あの時気が付かなかったんだろ……
「えっと、変ではないよね?」
「似合ってると思う」
「……うん、それならいっか!」
それからブラだけ外す。
今気づいたけど、寝る前は付ける必要なかった。
パジャマは猫の耳が生えてて可愛い……まあ、私が選んだんじゃなくて、フィリスが買ってくれたんだけどね。せっかくだから着てみた!
「……猫の真似、してみて」
「にゃ、にゃー?」
手を招き猫っぽくして首を傾げる。これでいいのか不安で……頭を撫でてるから大丈夫だったみたい。
でもね、顎の下を撫でられてもあんな声は出ないんだよ?
「ん、んふふっ……く、くすぐったいよぉ……」
「……可愛いからこれでいい」
良くない、私は全然良くないよ!?
……もう無理、ルルから離れないと。くるっと後ろを向いてー……ベッドまでダッシュ!
「逃がさない」
脱兎のごとく逃げ出そうとするも、一瞬で腕を掴まれた。
当然力で勝てるはずもなく、ルルに後ろから抱きしめられてます。かなり大きいおっぱいが肩に乗った状態な訳でして……お姉ちゃんが〝むにゅっ〟だとしたら、ルルは〝ふにゅんっ〟だね。マシュマロみたいな?
「……抱き枕になってくれるならもうしない」
「だ、抱き枕……?」
「ん、抱き枕。添い寝とも言う」
なんて魅力的な提案でしょうか。
断るという選択肢が見つかりません。……何か忘れてるような気がしないでもないけど、思い出さないって事は大したことないでしょ。
「うん、いいよ」
お願いされた事だから、そうしないとくすぐったいのが終わらないから、仕方ないっ! ……えへへへ……やばい、顔がにやける。
何故かルルに抱えられたままベッドへ。
超ふかふかなベッドに横たわると、今度は正面からぎゅっとされる。こんなに幸せなら抱き枕でいい。
「おやすみ」
「おやすみなさいっ♪」
寮生活一日目は、幸せいっぱいでした。
しかし、最後の最後に大事な事を忘れていたのです。それが何だったのか、朝になれば嫌でも分かる時が来てしまうのでしょう……
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