Ⅱ 事情説明とこれからの事

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Ⅱ 事情説明とこれからの事

  あの後、騎士と魔法使いを下がらせた王女様――じゃなかった。普通に呼んで良いって言われたんだった。  でね、エルティナさんと私達は、別の部屋に案内されて説明をしてもらってたんだよ。  その話っていうのは、  ・どうして私達が異世界に居るのか。  ・あの人達に襲われたのは何でか。  ・これから何をすればいいのか。  っていう三点。  大雑把に言うと、世界に歪みが生じて私達が落ちてきた……らしいんだけど、これだけじゃ分からないよね。  そもそも、歪みが出来る理由は敵国の『リディアント王国』がマナを使い過ぎてるからなんだとか。  マナっていうのは、空気中に存在する便利な生命エネルギー的な? それを戦争に使う武器で大量消費してるんだって。殆どの国は止めるように言ってるんだけど、『知るかボケ』みたいな感じでガン無視されてる。  マナが無いと、世界を維持するのが難しくなって歪みが生じる。それが結果的にどこかの世界と繋がって、私達みたいに落ちてきちゃう。  帰る方法は……今のところ無いみたい。  あ、ゲームキャラでここに来た理由は不明ね。  次は襲われた理由。  騎士団長さんが短気っていうのはあるんだけど、僕達以外の異世界人がやらかしてるから。殺人、強姦、強盗……並べて行くとただの危険人物だね!  ま、そういう訳で、異世界人の私達がこそこそしてたから『何か企んでいるのか!?』って襲われたんだって。特に、騎士団長の奥さんは異世界人に殺されたから……気の毒ではあるけど、斬りかかって来るのは勘弁して。  三つ目、これから何をするのか? 「アリス様と」 「様は付けなくてもいいよ?」 「私も大丈夫よ。王女のエルティナを呼び捨てにしておいて、こっちには様付けなんておかしいじゃない」 「ねー♪」  ホントにそうだよ。  私はほら、この体だと歳下だからさん付けで呼ぶけど、王女様だからさん付けでも足りないくらいだと思うし。 「では、アリスにフィリスさんとお呼びしますね」 「はーい」 「分かったわ」  口調は素なんだろうねー。  こう、様になってるというか、品があって違和感を覚えないみたいな。つい見惚れちゃったのは仕方ないと思うんだ。 「お二人には、姫将学園に通って頂きたいと思っています」 「「きしょう?」」 「姫に将軍の将と書いて姫将と読みます」 「す、凄い名前ね……」 「どんな付け方をしたらそうなるの……?」  女の子が将軍になるみたいな? 「姫に紋章の章と書く、一部の女性にのみ現れる〝能力を持つ証〟が元になっているんです」  そう言って首の横を見せるエルティナさん。  羽、かな? 桃色の羽が描かれてる。刺青、じゃないよね……?  なんて思っていると、冗談を口にするような声音でこんな事を言う。そのものだろうけどさ。 「私は先天性でしたけど……後天性の場合も稀にありますし、お二人にもあるかもしれませんね?」  へぇー、そうなんだ。とよく分からずに見える範囲を調べてみる。あ、胸とか普通に見える……! そっか、ゲームじゃないから制限なんて無いもんね!  自分の体だけど、なんか変な気分になりそう。  姫章はやっぱり見つからないねー。  ……はっ!? こ、これは確認、そう、確認のためだから、下を見てもいいでしょ? そっと、そーっと。 「「……………あった!」」 「え? ……あ、ありました?」 「ええ、ここに」  フィリスは太ももという際どい所。いや、私の方が際どいですね。だって…… 「こんな所にあったよ」  と言ってへそのかなり下を指す。淫紋かな……? そう思われても仕方ないような位置。女の子相手でも見せるのは恥ずかしいよ。むしろ、女の子だからかも。 「お二人とも、なんて……」 「え、これって驚く程凄いの?」  私が首を傾げると、エルティナは頷く。 「この国の人口はおよそ12億7000万人。姫章を持つのは、その中で3000人ほどですから。他国も含めればまだまだいらっしゃいますけど……」 「この国の人口が凄い……それでも3000人かぁ。42万分の1くらいってことだよね」 「はい。さらに、桃色は特待生として優遇されていますね。姫将学園にも15名いらっしゃいますよ」 「ん? これってみんな同じじゃないんだ?」 「……エルティナも同じ色よね」 「私も姫将学園の生徒ですから」  ああ、てことは、さっき床を壊したのってエルティナさんなんだ。少なくとも、あれが出来るくらいには強いって……半端ないっす! ((絶対怒らせないようにしよう……))  その時、二人の心は重なった。 「あの……どうして後ろに下がるんですか?」  ゆっくりとソファーに戻ろうとしていた私達は、そんな風に聞かれてビクッとしてしまった。 「そ、その、王女様だし、近付かれるのは嫌かなって」 「そ、そうよね、私達は一般人だもの!」 「そんなことありませんよ? 私、友人があまり多くないので、気軽にお話出来る方っていいなぁと思っていたんです。是非、こちらでお話しましょう!」  ポンポンと両脇を叩くエルティナさん。  テーブル挟むと遠いもんね、分からなくはないよ。でも、私は一応男……なんだよ? たぶん。今となってはどういう扱いなのか分からないけど。  ともかく、エルティナさんの隣に座ると、「ふふっ」と笑っている様子が見えて安心した。良く考えてみれば、あの状況でも誰一人(私を除いて)怪我をしてなかったんだから、エルティナさんが優しいのは疑いようもない。 「あ、そうでした。これをお渡ししようと思っていたんです」  取り出したのは黒くて細いブレスレット。……じゃない。触ってみた感じ、機械だこれ。 「どちらの手でもお好きな方に付けて頂いて……ちゃんと出ましたね。それは全国民に無償で配られる情報管理端末、〝ユニオン〟」  誰がその名前考えたのかな。……付けたらゲームのメニューみたいなのが出てきた。個人情報の欄には所持金、性別、年齢とかがあって、経歴まで――経歴!?  現実の方の私じゃんこの経歴!  最近の所まで来て、 『現実の体とゲームのキャラクターが世界の歪みに落下。再構成の際、VR機器に繋がれたままだった脳が誤認識。―――(男)、はアリス・ファンシア(女)、に再構成された。  二つあった体の内一つは消滅しかけたが、アリス・ファンシアと一致する情報が多かったため、合成。その結果、特異な能力を得ることとなった』 「「ちょっと何言ってるか分からない」」 「?」  ハモった。そりゃハモるよ、訳わかんないもん。  ついでにエルティナさんにも見せてあげると、私が元男ってところでびっくりしてた。 「だから距離が遠いんですね……」 「あれれ、バレてた?」 「バレバレでした。でも、今は女の子じゃないですか! そういう事なら遠慮しませんよ――えいっ♪」 「ちょっ!? な、何で抱きつくの……?」 「こんな妹が欲しいなぁって、昔からずっと思ってましたからぁ〜……ふふっ」  凄く、楽しそうですね。  一応、中身は男……? だと思うんだけどなぁ。うぅ、柔らかくていい匂いで、とにかくありがとうございますっ!  あ、ちょっと待って? 「こちょこちょはらめぇぇ――――――――っ!!!」  この後、いっぱいこちょこちょされた。
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