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と、ここで俺は重大なミスを犯した。
「お客様!」
店を出て歩きだしたところで、飛び出してきた店長に呼び止められる。それと同時に俺も気づいた。
「あっ…」
我ながら、何故すぐ気づかなかったのかと悔やむ。店長の手には、俺が外して鏡下に置いていたプロテクターがあった。
「すみません、わざわざありがとうございます」
俺は焦ってそれを受け取ろうとしたが、店長はそれを差し出さず、そのまま俺の首の後ろへ腕を回す。
「お付けしますよ」
シャツの襟を広げられ、首がスッとする。プロテクターが首に巻かれる時に、自然と店長の指先が首元に軽く触れた。俺はフッと縮むように息をのんだ。パチッと金具がはまる音が響く。
店長の顔を見上げる。その穏やかな笑顔が、出入口のガラスから漏れるサロンの照明に照らされ、美しい陰影感を出している。
さすがイケメン。ライティングも相まって芸術的だ…なんて頭の片隅で惚れ惚れしつつ。「流されるなよ」と自制して、俺は見えない壁を張って作り笑いを浮かべた。
「すみません!勝手に…嫌でしたか?」
俺の笑顔を見て、店長は申し訳なさそうに言う。俺も逆に申し訳なくなる。
「いえ、お気になさらず、大丈夫です」
「また、よろしければお越しください。誠心誠意、切らせていただきますので」
再び、店長がお辞儀をする。
「はい、素敵なお店なので、また来ようと思います」
俺はそう言い、その場を去った。
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