つむじを暴かれる

カットモデル

　そろそろ髪が邪魔になってきた。
　でも、髪を数センチ切るのに、数千円のお金を出すのは、今の安月給な俺にはちょっとキツい。今までは千円カットでしのいできたけど、客もスタッフも威圧的なあの雰囲気がどうも苦手だ。

　だから何か良い方法はないかとネットを探していたら、「カットモデル募集サイト」を見つけた。カットモデルってのは、駆け出しだったり見習いだったりな美容師の、実践的練習台になる人のことだ。言葉の響きから、若くて綺麗な女性だけしかやらないイメージだったけど、今は老若男女、第二性別を問わず募集するサロンが多いようだ。

　俺はなるべくその中でも、「オメガ専門」のサロンを探した。いくらオメガの社会的地位が確立されたこの現代といえども、体質的な問題や、未だに残る差別から起こるトラブルは後を絶たない。顔のつくりが冴えない俺ですら、アルファとのなんやかんやによってトラウマを抱えているし、理解のないベータから心ない言葉をかけられたこともあった。だから無駄に気疲れしないようなところを探していたのだが、オメガ専門のサロン自体、数が少ないらしい。見つけても、予約が取れない状態がほとんどだった。

　仕方なく、少し条件を広げて「オメガ可」で検索したら、職場の近くでひとつ見つけた。新人の練習のため、少し遅い時間になるものの、何とか予約をとることができた。