私たちの夏

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今年の夏は暑すぎる。 私はそう思い夏休み期間中の登校日なので真夏の炎天下の中学校へ向かう。 校舎内は外と同じ暑さだが、教室に入るとひんやりとした涼しい風が流れて来た。 そう言えば、耐震補強工事の時に各教室にエアコンが付いたのを忘れていた。 そうして自分の席に座れば隣の男子が、 「俺昨日までグアムに居たんだぞ」 等と言ってくるが無視だ。あいつは何時もああいう自慢を言ってきては天狗になるからあまり好きではない。 逆側の席の女の子は欠伸をしながら席に着いてきた。 「おはよう」 そう声を掛ければ、 「おはよう、もう眠くて仕方ないよー昨日までおばあちゃんの家に居たから帰ってくるの大変だったんだ」 「そうなんだ大変だね」 そんな風に返すのだが正直羨ましくて仕方がない。 私の家は両親が共働きで忙しく、滅多に家族揃っての外出等そう簡単にできなくて、本当に羨ましい。 そうしているとチャイムが鳴り、先生がやって来て教壇に立つ。 「夏休み中無茶なことはしてないか?くれぐれもはじけ過ぎない事、いいな」 と言いながら出席を取っていく。 私の番になると「はい」と答えて、次の人へと回っていく。 それから先生からの注意と課題のプリントが配られると、登校日はこれで終了だ。 これだけの為だけに学校に来るのが勿体ないと思う程内容の無い一日に面倒くさいなというため息が漏れる。 そうして荷物を纏めて机から立ち上がると、友達の沙耶の元へと行く。 隣のクラスの沙耶は小さい頃からの幼馴染で、何かあっては二人で過ごすのだ。 「沙耶、一緒に帰ろう」 そう隣のクラスの扉の前で声を上げると、恥ずかしがり屋の沙耶は慌てて私の所へやって来るのだ。 「もう、大きな声で呼ばないでよ」 「いいじゃない、ちょっとくらいさ」 心なしか沙耶の顔色が悪い気がした。それで沙耶に、 「体調悪い?」 そう聞いてみた。返って来たのは、 「そうじゃないの、私冷え性でクーラーの冷房でも寒くなって」 「そうなの……わ!?冷たっ!」 「でしょーいつもこうなの」 「でも冷たくて気持ちいい、ひんやりする」 そう言って私は沙耶の手を自分の頬に宛がうと、その冷たさを味わう様にスリスリと頬擦りするのだ。 「ちょっとーやめてよー」 という沙耶は嬉し気に笑っている。 そうして一緒に帰りながら沙耶の冷えた手を温めながら、私は冷たさを存分に味わいながら「ちょっと帰りに寄り道しようか?」等と言い合っては学校の校舎を出るのだった。
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