小人の思い

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僕は人間でいうと指の大きさ位の小人だ。木の葉の洋服を着て木の実の靴を履いている。髪は金髪で目はブルーの色をして人間でいう西洋人の見た目だ。性別は男である。  小人の他には妖精とも呼ばれる事がある。僕が見えるのは純真無垢な心を持った動物や人間の子供くらいで一般には想像上の生物と言われている。だが僕は現にこうして存在しているわけだし、だいぶ昔の話だが小人の仲間もいた。はるか昔の事だったのであまり記憶が無いが、森で産まれ育ってから家につく小人になったんだと薄っすら覚えている。    遠い記憶の中で思い返す。僕は田舎の森が嫌いで、都会に出てきた。今はマンションで仲の良い家族達と同居している。今度、僕が住みついている家族の皆が旅行に行くというので僕は憚りながらも一緒に行きたく、どうやってついて行くか案を練っている所だ。因みにこの家族は両親と子供1人の3人暮らし。子供は幼稚園生で女の子である。女の子は僕の事が見えているらしく二人でお喋りをしたりままごとをして過ごす事がよくある。女の子は旅行を楽しみにしていて一緒に行こうと誘ってくれた。 「ねえ、ねえ、小人さん、お留守番なの?一緒に海に行かない?」  家族の皆で一泊二日かけて千葉の海に行くとお父さんが言っていた。僕は海に行った事がない。どんなところなのだろうか。小人の仲間はいるのだろうか。女の子に聞いたら女の子も初めてだと言っていた。そうだ、確かに僕の記憶の中ではこの家族が海へ行った事は無い。言い忘れた。この子の名前は千夏ちゃんと言う。
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