3 幸せに溺れなさい

2/2
前へ
/10ページ
次へ
ショウコを送り出した後、私は自分の部屋に戻り、その床の扉を開けて、地下へ続く階段を下りた。 階段を下りきった先に、小さな牢屋があり、そこに手足を拘束された男が、床に転がっていた。 「じーさん!これはどういうことだ!話が違うじゃないか!!俺はあんたに言われた通り、あの女を始末して、その罪をショウコに着せて、ちゃんとショウコを人ゴミに堕としたじゃないか!そうすれば俺を人間に戻すって言ったじゃないか!」 男は床に這いつくばりながら、私に向かってギャンギャンとうるさく吠えてきた。 「それはショウコが、私の試験に合格しなかった場合の話だよ。でもショウコは、私の見立て通り、完璧に『孫のアズキ』をやり遂げた。ショウコこそ、私の求めていた孫であり娘だ」 彼女の事は随分と前から監視していた。そして、彼女ならきっと、私が失ってしまった大切な孫の代わりに、求めていた理想の孫になってくれるだろうと…。 だから、このクズの人ゴミの男を利用して、彼女を一度人ゴミに堕としたのだ。 それは、人ゴミを管理する最高責任者の私にしか出来ないこと… そして私は今、理想の孫であり娘の、彼女…ショウコを手に入れた。だからもう、この男は用済みだ。 私が男に背を向けると、それを合図として、体格のいい男が二人現れた。 「後は頼んだ」 「お任せ下さい、望月様」 私は振り返らずに下りてきた階段を上がった。 背後で男の命乞いする声が聞こえた。そしてそれはすぐに悲鳴に変わり、すぐに静かになった。 私は今度こそ失ったりしない。 大切な大切な私の孫であり娘のショウコ。 どんな手段を用いても、決して私より先には死なせたりなんかもしないし、誰の手にも渡したりはしないよ。 一生私の孫として、娘として、私の元で幸せに溺れて生きなさい… 最高の孫として、娘として
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加