1 孫のアズキ

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私は、先生である初老の男性の元へ引き渡された。 そして 「今日から君は私の『孫のアズキ』だ。君は私が良いと言うまで、『孫のアズキ』でいてもらう。そうすれば人に戻そう」 そんな、簡単なのか、難しいのか、全く分からない命令を受けた。 そして私はまず、その初老の男性の家に連れて行かれ、アズキの部屋に案内された。 そこは可愛らしい子供部屋で、だけれども、机やベッドは、私でも使える大人のサイズで、クローゼットを開けてみれば、小さな女の子が着そうなデザインの、大人のサイズの服が掛けられていた。 私はこの部屋に、何かとても不自然さを感じた。 ここは、元は本物の孫のアズキの部屋かもしれない。だけど内装も、置いてある物も、子供部屋のそれなのに、明らかに大人の私が過ごせるようになっている。 私を引き取る事を前提に、この部屋も服も用意したのだろうか? そもそも、『孫のアズキ』とは本物に実在するのか?それとも実在していていなくなったのか?それとも、この初老の男性が思い描く、空想の人物なのか……? 「アズキ、明日から幼稚園だからね、ちゃんと寝る前に準備をしておくんだよ」 トイレやお風呂など、簡単に家の中の説明をして、食事の時間や起床や就寝時間を教えて、最後にそんな一言を残して、初老の男性は自分の部屋に行ってしまった。 幼稚園!?私が?! いくら孫になりきると言っても、私のような大人が幼稚園に行っても大丈夫なの?! そうだ、それよりも、幼稚園に行く準備しておけって言われたっけ。とにかくここでは、模範生の言うことを優先して聞かなくては…。 私がとりあえずクローゼットを開けると、中には、幼稚園児がよく着ているスモックが下がっていた。胸にはチューリップの形をした名札が付いていて『もちづき あずき』と書いてあった。 そしてそのスモックは、もちろん私が着れる大人サイズで、一緒に掛けられていた鞄も、私が使っても違和感のない、大人のサイズだった。 ここまで用意してあるってことは、当然だけど、幼稚園の方にも事情は話しているのよね……。そうじゃなかったら、私はただの変態だわ。 それに、私が人ゴミということも伝わっているのかな?でもそれなら、幼稚園の人も、そこに通わせている親も嫌がると思うんだけど… 私は制服らしき膝丈までの短パンと、白のブラウス、それとスモックと鞄を枕元に置いて、ピンク色でまとめられた可愛らしいベッドで眠りについた。 疲れていたのか、意外にも私は、その落ち着かない、可愛らしいベッドで熟睡してしまった。
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