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「同窓会のお知らせ」という名のラブレター
日毎暑さも増すこの頃、いかがお過ごしでしょうか。
この度〇〇高校〇〇年度卒業生の一員として、来たる8月、3年1組同級会を催したくご連絡申し上げる次第です。
往復はがきに綺麗に印刷されたフォントに心が和む。
高校を離れて3年。
進学した者、就職した者、既に結婚した者も居ると聞いて今更のように卒業したんだと実感する。
見上げる空は真っ青で、日差しが痛い。
田舎に残った級友も今頃真っ黒に日焼けしているんだろうか。
夏休み、特に予定も立てていなかった自分に、見透かしたように届いたはがき。
都会に出て来たはいいが、人付き合いの下手な自分を慰めていた日々に。
ふるさとのむせかえるような草の匂いが蘇る。
都会には人も沢山居て。
華やかな店はそこら中に溢れかえり。
娯楽にも事欠くことが無い。
夜は更ける事が無い分朝の爽やかさも縁遠い。
むきだした肩が心地いい。
抱えきれぬほど抱えた紙袋に自分で苦笑しながら片手で改札にスマホをかざす。
(みんななんて言うかな。あか抜けたって言ってくれるかな)
思いながら。
(でもそれも少し寂しいかな)
肩にかかるお土産の重さが益々想いを募らせる。
自然と顔が綻ぶ。
ホームの庇の向こうから差し込む光が、出欠部分を失くして半分残った葉書の差出人の名前を光らせる。
初恋の相手の名前がそこにあった。
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