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祠ノ子の秘密
「......よしッ...。」
ハーフアップとくるりんぱでアレンジした髪を、鏡で確認する。
白シャツにモモンガカーディガンを羽織り、鮮やかな赤の膝下スカートとあまり主張しないレースのソックス。焦茶のスクールシューズに似た靴を履いたスタイルだ。
(確か夜の九時ぐらいに親戚の人達が集まってパーティーするんだっけ...?)
山森に入るなら動きやすいパンツとかの方がいいと思ったけれど、
帰りが遅くなるかも知れないと伝えたらすぐに出れるように今の服装に着替えさせられた。
(似た様な服装で小さい頃もパーティーしたっけ?)
確かあの時は私の誕生会も含めていたはずだ。
(赤と白って紅白じゃん)
神社のことを思い出す。
...あまり良い気はしなかった。
何故だろう...祠にいた時は何とも感じなかったし、むしろ心地よかった。
あの心地良さも忘れかけているようだし、人の記憶から消えるのはあの場所で感じたモノから何までも忘れてしまうのだろうか?
そう考えると大きな消失感が襲う。
(前にもこんな感覚を経験したような...)
思想に耽っていると、
「燐〜?いつまで洗面所に居るのよ?アンタが13時には出るって言ったんでしょう〜?」
母、赤城 百合香の声が聞こえた。
「分かってるー!もう行くよ〜」
と答えると
「気を付けなさいね〜」
と緩やかな返答が帰ってきた。
「はーい 行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。」
母の声が玄関に響く。
靴を履いてドアを開けると風が横から髪をさらった。
「......。」
夜宵神社の方からだ。
なぜだか焦燥感に駆られ、気づいたら駆け出していた。
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