アイ/コトバ

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サユリは、家事を放棄し、家を後にした。 敷地から一歩外へ出ると、工場のような、倉庫のそうな建物が並ぶ通りに出る。 その通りを右に折れて歩く。 もう既に日は傾きかけている。しだいに長くなるサユリの影以外に人影は無い。侘しい道を真っ直ぐに、迷いなく歩調を変えずに進んでゆく。 前方の山々がその存在感を増すにつれて、橋がかかっているのが見えてきた。 目的の場所だった。 そして思い出す。 朝の、脳裏に焼き付いてしまったあの光景(ビジョン)。そのままの場所がそこにある。 橋の上にはあの男が立っている。 まるでリプレイ映像を観ているよう。 男に近づき、顔を確認する。 やはり、彼の顔は分からなかった。 サユリは目を細め、困ったように眉を寄せて微笑んでみる。
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