血塗られた頭巾

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 八月も中旬を迎えた土曜日。相変わらずの日照りと湿度の高さは、夏の終わりがまだ遠いと感じさせる。  冷房をガンガンに掛けたリビングで、ソファに寝転びながら、ぼんやり天井を見上げている御伽もこの暑さにやられたクチだろう。何もする気が起きないのか、ずっと同じ体勢で、食べ切ったばかりのアイスの棒をくるくると弄んでいる。  と、そこに電話の着信を知らせる軽快な音楽が鳴り響いた。御伽はそのまま腕だけ伸ばし、テーブルに置いていたスマートフォンを掴み取る。 「はい」  相手の名前を確認することもなく通話ボタンを押すと、だらけた調子で返事をした。 「橋梁下に遺体だ。支度してすぐに来い」  聴こえてきた大声に、御伽は咄嗟にスマートフォンを耳から離した。 「自分、今日は非番なんすけど」 「んなもん刑事に関係あるか! 地図は送っておく。急げよ」  用件だけ告げて金森は通話を切ってしまった。御伽はそのまま画像が届くのを待つが、何故かうんともすんとも反応がない。  暫く待って画像の受信を知らせるポップアップが液晶画面に浮かび上がる。送信元には金森ではなく芝の名があった。 「ああ、金森さん。SNS音痴でしたね」  恐らく画像の送信にもたついている金森の代わりに彼が送ってきたのだろう。よく見ると、アカウントのアイコンが芝生で、自分の影をシルエットとして写している。ユーモアのセンスもなかなかだ。  ソファから起き上がった御伽は寝癖のついた髪をぐしゃぐしゃに掻きながら欠伸を零した。 「そんじゃ、まあ、行きますか」
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