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最高の夜にしてやる
「それはどうかなあ。また自分の好きなように振る舞うかもしれないよ」
「だって、昨夜は私のことを気遣ってくれました。躯も拭いてくれました」
「ああ。あれは、晴之に謝らなくてはいけないなあ」
「気にしていないです。よくわからなくてびっくりしただけです」
「やっぱり気づいていなかったか」
何のことだろう。
見つめ返していると、加賀谷さんは笑い出した。
「起きたとき、下半身が濡れていただろ」
「はい。私が出したから……」
「あれ、俺の精液も混ざっていたんだよ」
「え、どういうことですか」
「眠っている晴之の顔を見て、俺は抜いたんだ。で、おまえのあそこにぶっかけた。ごめん、あまりにも寝顔がきれいなのでやってしまった」
私は何も言えなかった。
そんな清々しい顔で謝られても困る。
「どうやってやったか、教えてやるよ」
「いえ、いいです」
「遠慮するなよ」
抵抗する私を加賀谷さんは、ゆっくりと押し倒した。
「ほら、こうやって足を開いておまえの躯を跨いだんだ。おまえの顔に息をかけて、色が白いなあ、まつげ長いなあって思いながら扱いたんだよ」
顔が思ったより近い。
こんな至近距離で見つめられていたのか。
「晴之、晴之って言いながらいっぱい擦ったんだ。こんなことになったのはおまえのせいだって思いながら、おまえの上で腰を揺らしたんだ。俺が勝手に勃起したのにな」
加賀谷さんが私を見ながら、自分のものを弄っていた。
そんな大胆なことをしていたのか。
信じられない。
「俺が出したとき晴之は躯を震わせたんだ。起きそうになったんだよ。覚えているか」
首を振った。気づいたなら飛び起きている。
「あのときは焦ったよ。慌てて毛布をかけて晴之の頭を撫でたんだ。そしたら、また眠ったから安心したよ。それからずっと毛布ごと晴之を抱いていた」
「加賀谷さんが私を呼んでいたのは覚えています」
「何度も謝っていたんだよ」
「全然わからなかった……そんなことしていたなんて」
考えただけで頬が熱い。自分がしたわけではないのに、恥ずかしくなった。
「お、赤くなってきた。やっとわかったな。自分がオカズにされることが」
加賀谷さんはとても楽しそうだった。
どうして加賀谷さんは、いやらしいことでも堂々と言えるんだろう。私は顔に出さないようにするのがやっとだ。
「あとさ、もうひとつ謝らなければいけないことがあるんだ」
怒るなよ、と言って加賀谷さんは私に軽くキスしてきた。
「風呂は壊れていない。晴之の部屋に泊まりたくて嘘をついた」
「言ってくれたらよかったのに」
「言えないよ、下心丸出しだからな。俺は勇気のない狼なんだ」
「勇気がないんじゃなくてやさしいからです。私のことを考えてくれるから」
「そう思ってくれるならうれしいよ」
キスをしながら、加賀谷さんは私のネクタイを解いた。
「やらせてくださいって土下座すればよかった。今日も晴之のことを考えて、部屋でしちゃったよ」
「またしたんですか!」
「ああ、いっぱいした」
「加賀谷さんって、そんなことしない人だったと思ったのに」
「理想をぶち壊してごめんな」
加賀谷さんは、色気のある笑みを浮かべている。
このまなざしの奥に、荒々しい野性が潜んでいるのか。
物静かな人なのに、頭の中は私みたいに淫らなことでいっぱいなんだろうか。
「晴之のイク顔や寝顔を思い出したら、何度も勃ってくるんだよ。やばいなと思ったけど止まんなくてさ」
加賀谷さんはいつもより饒舌になっていた。
「晴之。俺のものにしていいか」
「はい」
「後悔はさせない。最高の夜にしてやる」
とうとう、抱かれるんだ。
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