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ちゃんとできたんだよ
加賀谷さんは私の手を取り、指に歯を立てた。人差し指をしゃぶられ舌を使って強く吸われた。
傷口に唾液が染みる。腰と指先に、痺れるような快感が走った。
「あ――ああ、うますぎて、中毒になる、くっ」
「よかった……あ、あ」
「きれいだよ、晴之――」
きれいなのは加賀谷さんだ。全身を使って私を愛してくれる。
私に昂ぶりを挿し込む度に、肩の筋肉が盛り上がる。引き抜く度に、腹の筋肉が更に引き締まる。
私の中を抉る度に、胸の筋肉が上下している。
躯を動かす度に彼の汗は光る。肌に宝石が散っているみたいだ。
永遠にこの姿を見ていたい。もっと感じて、もっと淫らになってほしい。私は腰を揺らしつづけた。
「ああ、う、あ――」
獣のような声で吠えながら、加賀谷さんは欲望を突き刺してくる。高い声で喘ぎながら、私は背を仰け反らせ、尻を震わせた。
絶え間なく蜜を零していた私の屹立を、加賀谷さんは指で刺激した。
「ああ、あ……」
私は精を吐き出した。白濁が顔にまで飛び散った。こんなにいっぱい出たのは初めてだった。
「あ、ん、ん……」
私の中が無意識に大きく痙攣する。奥への放出を促すような動きだった。動きに合わせて、大きくて硬い加賀谷さんのものが深いところまで進んでくる。
「ん、ん――」
大きく身を震わせ、加賀谷さんは私の中で達した。
「あ……」
注がれたものがあまりに熱くて、下腹と腿が痙攣した。
「く、うう……」
深々と私を貫いたまま、加賀谷さんはゆっくり腰を揺らした。呻きながらも、下半身を動かしている。
思わず、結合部を見た。
赤々とした私の秘所と、加賀谷さんの屹立の間から、白濁があふれ出した。更に、加賀谷さんは腰を回した。
私の中をかき混ぜるような動きだった。
ぐちゅ、ぐちゅ、と音を立てながら白い蜜が零れ出す。
「だめ、あ……ああ」
なぜか私は叫んでいた。何がだめなのだろう。
中に出されるのがいやなのか。
それとも、一滴も洩らさず自分の体内に残したかったのか。
自分でもわからないまま、私は首を振った。
私の尻を伝い、加賀谷さんの精液は床に落ちていった。
それでもまだ加賀谷さんは腰を振っている。残滓までも私の奥に流し込もうとしている。
「ああ……」
喘ぎながら、私は目を閉じた。
一瞬、加賀谷さんが笑ったように見えた。
「晴之、晴之……」
目を開けると私は浴室にいた。腰にはタオルが巻かれている。
加賀谷さんは、横抱きにした私を両腿に乗せて座っている。
私の名前を繰り返し呼びながら、全身に唇を落としている。
息をするのがやっとだった。くちづけされても意識がはっきりしてこない。
「……終わったんですか――」
私の声は枯れていた。
「ああ。ちゃんとできたんだよ」
潤んだ瞳で私を見つめている。私の手をひたすら撫でてくれた。
「がんばった。晴之は、すごくがんばったよ」
「よかった……今度はできたんだ」
涙が頬を伝った。
加賀谷さんは頷き、すすり泣く私の頭を撫でてくれた。
泣くのをやめたいのに、涙があふれてくる。
見つめ返しているうちに、焦げつくような狂おしい記憶がよみがえってきた。熱っぽい彼のまなざし、荒々しい声を思い出した。
加賀谷さんに愛された。この肌で、心で、加賀谷さんを感じた。
「怖かったけど、できたんだ。か……」
私は、息を整えた。寿さん、と言った。
「寿さん、愛してる」
「やっと、名前で呼んでくれた」
微笑みながら彼は私の唇を奪った。抱きつこうとしたら、腰に鈍い痛みを感じた。
抱かれたという確かな感触だった。
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