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空回りサンシャイン
出会い系のアプリで知り合った俺たち。
気が付けば2年が過ぎていた。
同じ歳ということもあり、気軽に愚痴も言い合える仲になれたのは、俺にとって、すごく嬉しいことだと思う。
だから、こんなにも傍にいないことに不安でしかないことに自分でも驚いている。
ねぇ、お前はどう?
寂しいって、少しでも思ったこと、ある?
俺の事、思い出したりした?
たぶん、お前は俺の事なんて、なんとも思っていない。
だから、2年間、手は繋いでくれたけど、それ以上は何もなくって。
お前も平気な顔をしているから。
...でも、もう無理かも。
お前の事、好きすぎて...辛い。
一緒に飯を食べてるときの顔とか、にやけてるのを見たら、こっちまで勘違いしてしまう。
だから...。俺...。違う人を...。
ー!!!!?
送られてきたメールを見て、頭の中の血液の温度が下がった気がした。
ふざけんな。
気が付けば、身体が動いていた。
自転車をこぎまくって目的の部屋の前まで来た。
貰った合い鍵で部屋の中に入る。
もしかしたら、もう、誰かを入れているかもしれない。
そう思うだけで頭の中が真っ赤になりそうだった。
部屋の中は暗い。
ー!?
微かに甘い匂いとアルコール。
寝室の中を見ると、転がったカクテル缶数個とスマホを握り締めたままのあいつがベッドの上で寝ていた。
とりあえず、自分たち以外の人間の気配はない。
ホッとした。
けれど、送られてきたメールの真相を聞かなければと思い、寝ているところを起こした。
「おい。
なんだ、このメールはっ!
ふざけんなっ!
お前が手を握っただけでびくついてるから、お前に合わせてやってたんだろうがっ!
何が別の人?
ふざけんなよ!!
おいっ!起きろってっ!!」
こいつは、ビールとかならこんな風に寝ることもない。
カクテルを飲むと、眠たくなるという変な酒癖に気付いたのも俺。
俺だけの前でなら飲んでもいいっとあれだけ言っておいたのにっ!!
ぷくりとした唇の間から甘い匂いと共に、「...うーん...好きなの...」。
「...くっそっ! 寝ている奴に手を出すわけには...でも、でも...カワイイ...」
何もかもが運命?って、思った。
警戒心が強いけど、気を許すと、そのギャップにコロッと落ちてしまった。
同じ歳で大学も一緒。
住んでいる場所も意外と近くて趣味もあう。
オマケに料理がうまいこいつと、家事能力だけはぴか一の俺。
バランスが取れていた。すべてが俺たちのためにあると思っていた。
指で唇をつついてみると、その指を追いかけるように動き始める舌。
寝ているのに、無意識に動くその赤いぬめり気のある物が卑猥に見えてきた。
「おい、水島。」
ムニャムニャと幸せそうな顔をして寝始めた水島を必死で起こした。
「起きろっ!ほら、出ないと、キスするぞ?!」
すると、寝ぼけた様子の水島は、ニコリと笑いながら、
「いいよ。はいっ、ンー!」
ー!?
いや、これはこれで、オイシイ状況。
とりあえず、頂いておく?なんて思ったりもした。
でも、浮かんでくる考え。
こいつ、慣れてんのか?
もしかして、キスを誰かとしたことが...。
出会った時は誰とも付き合ったことがないと言っていた水島。
俺の知らない所で、誰かと済ませているのかと思ったら、腸が煮えくり返るようだった。
顎を片手で抑えて逃げ場を無くす。
「ン...クチュ...ン...」
抵抗するのではなく、全てを受け入れる反応に、頭の中がどんどん自制を失っていきそうだった。
「...ン...プハァ...、ちょ、息が......あれ?」
絡まる舌もカクテルのせいか、甘く感じる。
あまり慣れていない所もあるようで、呼吸の下手さに少しだけ安心していく。
呆けた顔をしたまま、顔を離した水島は寝ぼけていたのが戻り始めたようで、俺はその様子をじっと見つめてみた。
「...なんで?」
口の端からツーっと流れていく涎。
それなのに、水島は、俺がこの部屋にいること自体、疑問なようだ。
「お前が変なメールを寄越すから。
もう、我慢してやってたの、やめた。
いい友達?
そんなもん、こっちから願い下げしてやる。
お前を怖がらせないようにって、それだけを頭の中に入れてたっていうのにっ!」
覆い被ってやろうとした。
けれど、
「ちょちょちょちょちょちょっちょっと待ってっ!メールって何?」
水島は、いくつかの自覚があるキーワードが出てきてすでに引き攣った顔をしてやがる。
だが、許すつもりは...ない。
「...お前のにぎりしめておられるスマホを見たら、いかがかな?」
あえて変な言葉で威嚇して言ってやる。
鼻息まで荒くなりそうなのをなんとか抑えている俺。
水島は、言われた通りスマホを見て、青くなったり赤くなったりし始めた。
「えっ!いやっ、そのっ!これは、これは...えっと...。」
誤魔化すつもりかっ!
じっと水島の目を見つめる。
水島は、言い訳をしようとしていた。けれど、それを諦めたようだ。
「...ごめん、ひいた? 傍にいた奴が、こんなこと思ってるの、ひいた?
…送るつもりなんて...なかったのに...。
こうして、書くだけで送ったことにして、それで、満足というか、自己完結してきたのにっ!」
震える声の水島の言葉に、ふっと吹き出してしまった。
「ばーかっ。
なに自己完結してんの?
これをみて、俺、すっげー焦ってチャリこいできたんだけど。
もし、部屋に誰かいたら、殴ってたと...思うし…。
俺の水島なのに。」
ー!
水島は、俯いていた顔を上げた。
「...それって...。」
2年のうちに気が付いた水島の事。
意外と鈍いところもあるし、変なところで意地を張る時もある。
それも含めて好きだなって、思うようになってもう2年。
「もう、2年も我慢してる俺、褒めて欲しいんだけど?
好きすぎて、手が出せなくなってんの」
ー!!
忙しい奴だ。
顔を真っ赤にさせて、瞳を潤ませている水島。
コロコロと変わる表情も惚れた所だ。
水島が絞り出した言葉は「...純愛かよ...」だって。
そういえば、どうせ、恋をするなら、純愛とかいいよねって、いつか言ってたことがあったっけ?
俺は、嬉しそうにしている水島を抱きしめながら言った。
「あぁ、純愛だ」
嬉しそうに抱き着く水島。
もう、どこにも行かせない。
他の奴の所なんて行かせたりしない。
「...気づかなかった?」
「うん、だって、何にもしてこなかったじゃんっ!俺、誘ってみたこともあったよ?!」
「っ!!やっぱりっ! アレだろっ! ネコ耳とか、媚薬を手に入れたっ!とか。」
水島は、真っ赤になったまま小さく頷いていた。
「...だって、手を繋いでくれたのに、全然、キスとか、そういう...雰囲気、避けてたじゃん。 あ、俺って、お前のタイプじゃないんだって思って、凹んでた。」
ー!
「お前が、手を繋いだら、びくついて周りを気にするし。 キスもできそうな時があっても、お前、その空気が耐えれなかっただろうがっ!」
すると、とうとう、水島がプンスコ!と、怒り始めた。
「だって、初めてだもんっ!ドキドキしすぎて、口から心臓がでそうだったんだもんっ!」
ポカポカと、軟弱な拳でパンチしてくる水島。
その手を、取ってみた。
「...へ?」
目を見て、ニヤリと笑いながら言ってやった。
「今日からは、逃がせねーぞっ!」
顔を真っ赤にした水島。
そのあと、時間をかけて、丁寧にぐずぐずに水島をしたあと、頂いた。
めっちゃめっちゃうますぎた。
「...も...もう、わかったから...」
涙やら涎やら、鼻水やら。
オマケに水島のムスコに至っては色んなものを出して、もう、出てこない。
ちなみに、部屋の中は大変なことになっている。
片付けの事を考えるのは...後にしておこう。
「...だめ、止まんねー。
好きな奴とするの、こんなに気持ちが良いなんて...聞いてねぇ...」
俺の唸るような声に、引き攣った顔で聞いていた水島。
最後の言葉に、ゆるゆると顔を崩して照れていた。
でも、同じことを思ったんだろう。
コクっと頷いてほほ笑んだ。
「...幸せすぎてこえーんだけど」
繋いだ手に力を込めながら頬に同感だとキスをおとしておいた。
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