ぼくとねこ

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ぼくとねこ

ぼくには、ずっと一緒のねこがいる。 朝になるとねこはぼくを起こして一緒にベッドから出る。 僕がおばさんとおしゃべりしてる間、ねこはずっとぼくの膝に乗っているし、おじさんのお手伝いをしている間も足元をずっと付いてくる。 夜になるとぼくがねこを抱っこして一緒に眠る。 毎日、毎日、生まれた時からずっとそう。 僕は夜がいちばん好きだ、ねこをずっと抱っこしていられるから。 ぼくのねこは普通のねこじゃない。 機械で出来たねこだ。 でも普通のねこと何も変わらない。 つやつやの毛は触るとやわらかくて、ゼリーでできているみたいにぬるぬると動く。 そしてぼくになでてもらいたい時には、にゃあと鳴いて膝に乗ってくるんだ。 でも、ぼくのねこは機械で出来ているから、このままでは壊れてしまうらしい。 ねこが壊れてしまう前に、工場で『めんてなんす』と『あっぷでーと』というのをしなくちゃいけないんだとおじさんが言っていた。 あっぷでーとをするとねこには、新しく出来るようになる事が増えるらしい。 それは温かくなるということ。 今のねこは機械だから冷たいけれど、これからは本物みたいに温かいねこになる。 ねこが工場に行っている間、ぼくは夜ひとりで眠らなくちゃいけない。 いやだ。 だって、ぼくは毎日ずっとねこと一緒で、ねことはなればなれになった事なんて今まで一度もないんだ。 ねことはなればなれになるくらいなら、温かくなんてならなくていい。 ぼくはねこを冷たいなんて思った事はないし、今のままのねこがいいのに。 ぼくのねこは、ぼくになでられるのが大好きだ。 にゃあと鳴いてぼくの膝に乗ると、そこでずっとずっと何時間でもおとなしくぼくになでられている。 ねこをなでる時、ぼくはまず自分の鼻とねこの鼻をちょん、とくっつける。 それからひとさしゆびで右耳の裏を3回かいてから、ねこがなでてほしいと言う所をなでる。 ぼくとねこはずっと一緒にいるから、ねこがにゃあと鳴くだけで、どこをなでてほしいと言ってるのかがわかるんだ。 ぼくのねこがにゃあと鳴くようになったのはいつからだったかな。 前の前のあっぷでーとの時だったかな。 あっぷでーとの時は、ねことはなればなれにならなくちゃいけないからイヤなんだけど、あっぷでーとから帰ってきたねこが鳴くようになった時は本当に嬉しかった。 ねこは名前を呼ぶと返事をするみたいににゃあと鳴いたから、ぼくはそれが嬉しくて楽しくて、何度も何度もねこの名前を呼んだんだ。 ねこの名前? ぼくのねこの名前はなんだったっけ? ぼくのねこが最初にうちへ来た時、今よりもっともっと小さな、手のひらに乗るくらいのこねこだった。 ぼくはひと目みただけで、ねこの名前を決めたんだ。 それから、ぼくとねこはずっと一緒にいる。 1日もはなればなれになった事なんてない。 どうして思い出せないの? ぼくがつけた、ねこの名前。
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