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『私たちは、決して刹那主義ではないけれども、あんまり遠くの山を指さし て、あそこまで行けば見はらしがいい、と、それは、きっとその通りで、みじんも噓のないことは、わかっているのだけれど、現在こんな烈しい腹痛を起しているのに、その腹痛に対しては、見て見ぬふりをして、ただ、さあ さあ、もう少しのがまんだ、あの山の山頂まで行けば、しめたものだ、とただ、そのことばかり教えている。きっと、 誰かが間違っている。わるいのは、あなただ。』                        (太宰治『女生徒』より)
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