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自転車で小さな水路の橋を渡った。そこは登下校で必ず通る橋だった。水路からの水音がことことと。秋なのに風鈴が「チラン」と鳴った。
「うぐいす橋」――と彫られてあることに驚いた。苔がその文字に挟まっていたことに心を止めた。その勢いのままに自転車を一瞬止めそうにさえなった。ここを通って一年半、そろそろ近くの家から飛び出す松にも常連の顔ができると思っていた頃に、その足元にあるマスターこだわりの床の名を今まで知らなかったのだ。
秋深まり、北の女帝が南の大王に押し勝つ季節、僕は何故か今日この目を通して、いつもとは違うものをいくつか見た。
登校の時。何気なく住宅の間を通り抜けていると、ふと少し上を向いて見たくなり、顔を上げた。すると、そこには街灯があった。
何故だかいつもは特に気にしないその背景にじっと目を凝らしてみたくなった。だから、観察した。
すると、意外にもお洒落なつくりをしていることに気が付いた。西洋風なのか大正風なのか、――とにかくロマンスという感じだった。一本の細い柱から二つの笠をのせた箱形の電気ランプが垂れた姿が情緒的で、製作者の粋を感じた。
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