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またこの橋を過ぎる少し前のこと。信号待ちをしていると、道路を挟んで向こう側に伸びる路地のところに三匹のカラスが群れているのが見えた。いつもなら流し目程度に行きすぎるこれまた背景、――然し信号待ちということもあってか、じっとそれを観察してみたくなった。
よく見てみると、一匹は塀の上にいて辺りをきょろきょろし、二匹は地面で何やらつっついて作業をしていた。何をしているのだろうか。落ちていたゴミでも漁っているのだろうか。
そんな予想を立てていると、突然、上にいたカラスが下にいる仲間に向かって吠えた。首を上下にこくんこくんと動かしながら、だみ声を強く発した。その強い声を聞いた二匹のカラスは、すぐさま羽を広げ飛び立ち、上にいたカラスもそれに続いて、電線の方へと上がった。
――何が起きたのだろうか。僕はその理由を必死に追おうとすると、その理由はあっさり向こうからやってきた。
それは自転車のカゴにぱんぱんに詰まった大きな買い物袋を入れた、おばちゃんだった。頭には緑と肌色の唐草模様の頭巾をかぶって、ふらふらこっちに向かって、先程カラスがたむろっていた路地の間を通り抜けきた。そして信号の前で止り、僕と道路を挟んで対面した。
その一連の出来事に対して、おばあちゃんの手の皺を見ながら、僕はカラスの知能の高さについて考えた――。
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