ⅢーⅠ

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 勉強の気晴らしに僕は夕方のアスファルトを自転車でいった。近くのショッピングモールへと向かった。目的はもうすぐ切れそうなシャープペンシルの芯と、本屋さんに行くことだった。本屋さんには特に何か買う目的は無かったが、未読の本が減ってきたため、いいのがあったら買おうと思った。  ショッピングモールに着いて、文具屋さん文具屋さん、と探していたが、中々見つからず、その内本屋さんにもいくつか文具が置いてあったことを思い出して、直ぐに二階の本屋へと向かった。ここの本屋さんはこの辺り一帯の中では一番広く、数も圧倒的に多かった。だからよくここにはお世話になっていた。  本屋へとエスカレーターを降りていくと、その先に緑の作業着を着たおばさんがいた。雑巾を持って、他にもいくつか道具も持って、腰を曲げてエスカレーターの掃除をしていた。  おばさんは僕が降りてきたことに気づくと、隣の上りのエスカレーターの方へと体をどかした。   僕は通り際に、自然と会釈をしたが、おばさんの表情は最後まで分からなかった――。
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