ⅢーⅠ

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 本屋に着いた僕は、端にある文具コーナーにシャープペンシルの芯があることを横目で確認すると、手にはまだ持たず、さっそく本が並ぶ方へと足を進めた。  奥までずらっと並ぶ本棚が、横に何層もある中のひとつにテキトウに入ると、医学書が沢山目に飛び込んできた。医学系は門外漢である。難しそうな人体のことやら病気についての言葉が、溢れんばかりにある道を、ただただ感心しながら突き当たりまでたどり着いた。  だいたいいつもこんな感じだ。棚の裾のところ――エンド台の上のところに――おおよそどういったものが並んでいるか書いてあるのに、先走って、とりあえず入ってしまう。  いつものように自分の衝動に反省した僕は、今度はしっかりと確認しようと思い、この頃進路関係で気になっている生物学の方へと歩を進めた。    生物学といっても沢山種類があって驚いた。動物なのか植物なのかそれとも微生物なのか、遺伝子なのか形態なのか……、生化学というやつもあった。中を覗くとどれも結構難しそうで、然しわくわくした。僕はとりあえず素人として、簡単そうなものから探ってみた。 『二重螺旋 完全版――ジェームズ・D. ワトソン』 いくつか見ていった中で僕が気になったのはこれだった。ワトソンとクリックがDNAの構造を発見してくまでのお話で、物語調なため、小説をよく読む僕には馴染みやすく、また専門的な用語がやたらめったらあるわけでもなく読みやすいと思って選んだ。価格はそこそこするが、面白そうならそれだけ払う価値はあるだろう。  「本のためとなると財布が緩みがちになるな」、そう思ったが、よくよく考えてみたら、本以外使う場所がほとんどないことに気が付いて、意味のない感覚だと、自分の心を嘲た。
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