ⅢーⅠ

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 落ち着いたBGM以外ほとんど無音の中、それから僕が言われた通りに本を読む振りをしながら、その野球部を観察していると、その野球部のやつは、シャープペンシルを数本選び取った。 「もっとバレないように。」 訳が分からなくイラつく僕は、思い切ってこれでもかと迫真の演技をしてみせせた。すると、その野球部のやつは握った数本のシャープペンシルを、――カバンの中へ入れた。  それを目撃した僕は驚いて、目を点にしながら、その場に立ち尽くした。ミツメが焦った感じですぐさま 「捕まえて」 と声を張った。然しとてもじゃないけれど僕には、あいつを捕まえる勇気なんてなかった。それよりか、かえって驚嘆して、恐ろしさがふっと上がってきて、後ずさりした。  僕がそうやってでまごついている間に、そいつは店内をすたすたと出ていってしまった――。 「ああ、行ってしまった。」 ミツメのその嘆息に、僕は驚いた表情のままミツメの方を見上げた。 「じゃあ、あれを学校の先生に言うことにしよう。」 「しよう。」 衝撃的な瞬間を目の当たりにした僕には、ミツメを訝しく睨みつける余裕がなく、ただただ言葉をオーム返しした。  自分の部屋に戻った後、僕は買った本を畳まれた布団の上に放り置き、ミツメに先程のことを問いただそうとした。然し、先にミツメが僕に話しかけてきた。 「来週、あの事を先生に言うように。」 僕はため息をして、 「はあ、てゆか何だったのさっきのは?」 と苛立ちをみせた。 「先程は済まなかった。もう少し早くどう行動するべきか言うべきだった。そんな急に万引き犯を捕まえるのは確かに難しい。事前の心構えが必要だった。これからは――」 「いや、そうゆうことじゃなくて――。」 僕は勢いで怒鳴ったため言葉が詰まった。冷静になって、もう一度問いただした。 「あれをしなきゃ、僕に悪いことが起きたの?」 「そうだ。でも、まだ大丈夫だ。来週中にちゃんと学校の先生に其の事を伝えれば、問題ない。」 僕は眉間に皺を寄せ、意味もなく頭を掻いた。それから返事もせずに、机に座って、ノートと問題集を開いた。――然し、問題文は読んでも読んでも頭に入ってこなかった。外はもう暗く、僕の影は下に落ちた――。
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