Prunus avium

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ペルソナ界には5人の曲者がいた。彼女らはちょうど会議をしているところだった。ひとりは落ち着いた私服で皆のまとめ役を担うマネ、ひとりはスーツ姿でいつも笑顔を見せているコンサ、ひとりはフード付きの寝間着でうつろな目をしてるインジュリー、ひとりはジャージで相手を睨みつけるような鋭い目をしているアクト、そしてもうひとりは会議にも関わらず皆がむかう長いすの横で布団を敷いて寝ているグースだ。     これから新しい世界が始まるんだよな。なんか楽しみだな。  コンサ。確かに楽しみだが、恐らく大変な苦しみを味わうことになるだろう。新しい世界に入るっていうことは、そういうことだから。     マネさん。僕もそれは分かってますよ。でも、新しい人達や新しい生活が待っていると思うとわくわくしてくるじゃないですか。こう体がおおーって動き出す感じ。         そんな甘い話じゃないだろう。戦争だ。つぶし合いだよ。だから俺らは覚悟を持たないといけない。相手を殺すつもりで。じゃなきゃ、俺たちが殺されてしまう。しかしまあ、わくわくするのは同感だ。  こらこらアクト。確かにコンサは少し考えが甘いかもしれないが、君は攻撃的すぎる。もう少し穏やかに行動しないと、人間関係においてよくない結果を招いてしまうぞ。大事なのは、穏やかでいながら、しかし時には積極的に行動することだ。         ちぇ、マネさんは曖昧すぎるんだよ。いっそのこと殺しにかかるくらいの気持ちでやればいいじゃないか。―というかそんなことより、いつまでぼうっとしてんだよインジュリーわ。                        え、何?         何じゃねーよ。これから新しい世界に入るからその心構えについて話し合ってるんだろ。                        うーん。まあ、頑張ろう。     いやいや、インジュリー君。それは適当すぎ。         ほんとだよ。おめぇーいつも独りで本ばかり読んで、ちったあこれからことについて考えろよ。                        うーん。ぼくは、本が読めて、沢山学ぶことが出来て、たくさん物語を書いたり、絵を描いたりできればそれでいーよ。         ちぇ、まったく。  まあまあ。インジュリー君はそれで結構。君の役割は君が求めるそのものだからね。         マネさんはインジュリーに甘すぎんだよ。 ちょうどその時、門の方から物凄い大砲のような音が会議室内まで響いた。  これは不味いことになりそうだ。
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