Prunus avium

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そのように無駄な努力を続けている頃、もうすっかり太陽はその力を余すことなく地上に見せつけ、娘の周りには太陽の信者である背を伸ばした無数の向日葵たちが、太陽にその両手をかざしていた。向日葵たちは歌った。 「おお 我らの太陽様よ  どれだけこの時を待ち望んだことであろうか  おお 我らの太陽様よ  力強く天へと近づくお力を平等に分け与えたまえ  存分に輝いてください  それがこの地の加護となり我らの導きとなる  存分に燃やしてください  それがこの地の罰となり我らの力となる  ビスミラー!  我らが天へと性を預けるとき  この神聖なる太陽期にきっと我らの願いは叶えられるであろう」  その歌は世界中のありとあらゆるところから響き渡り、まるで世界そのものが歌っているように広がった。しかし哀しいかな、太陽にその歌声が届くにはあまりにも遠かった。せいぜいその歌声は月にしか届いてはいなかった。月はあくびをしながら退屈そうにそれを聞いていた。月にいるウサギやらライオンやらカニやらはたまた老婆やら、わけのわからない生物も昼寝をしながら意味の分からない言葉で寝言を言っていた。
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