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太陽の熱によって温められた風は向日葵たちだけでなく、胸を突き刺され死んでいるように寝ていた娘にも吹き付けた。暑さのあまり娘の前身からは汗が噴き出ていた。汗は止まらない、止まらない。その汗はちょっとした雨の如く、隆起した土の麓に落ちていた。娘の肌が乾燥しはじめた。どんどん表皮に皹が入っていった。そしてだんだんと内部の水分もなくなっていき、艶かしい娘の身体は、その源である潤いが消えて、干からびた蛙のような状態になった。それは死の間際を意味していた。このままいくともうじき、娘は干からび死んでしまうことを意味していた。しかし相も変わらず娘は夢の中で必死の無駄な努力を続けた。満たされない穴の開いた心を満たそうと必死に努めた。グースも相も変わらず叫び、嘆き、砂嵐を生成していた。
そうしてもう身体が限界に達した、その時、1本の向日葵が上に伸びるのを止め、うつむきながら嘲るように、「太陽なんて本当はいない」と呟いた。その瞬間、先程まで快晴だった空が急にどす黒い影に覆われた。向日葵たちはみなおののき震えた。皆口々に祈りの言葉を呟き、両の蔓を組んで天に掲げた。「この神聖な祭壇に、悪魔が降り立ったのじゃ! お怒りじゃ、お怒り。太陽様のお怒りじゃ」、そう叫ぶ声も聞こえてきた。そして西の方角から物凄い音と共に悪魔の爪のような風が、向日葵畑に近づいてきた。向日葵たちは皆手を組みうつむき、「どうか怒りをお鎮めくださいませ、怒りをお鎮めくださいませ」と唱えた。しかし虚しいかな、そんな言葉などおかまいなく悪魔は向日葵たちを、その恐ろしい爪で無慈悲に引っ掻いた。西からどんどん散り散りに引き裂かれていく。悲鳴が聞こえる。向日葵たちの「助けてくれ」、「どうしてですか太陽様。我々がいったい-」、「止めてください、どうか、どうか-あっ」、そんな声が悲鳴と共にあちらからも、こちらからも聞こえてくる。悪魔はそんなことはお構いなしに、まるで日常の所作の如く、その爪を振り抜いた。――後には向日葵たちの死骸だけが残った。
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