ⅢーⅡ

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 つけ麺を食べ終えた僕等は、店を出て、近くの公園へ行った。つけ麺を食べて、そのまま解散でもよかったのだが、それだけだとなんだか寂しくて、コンビニでジュースを買って、公園のベンチに座った。  ベンチに座ると、まつむはコンビニ袋から菓子パンを取り出した。 「よく食うな。」 「いや、あれだけじゃまだ足りん。」 初春の陽光は暖かく、子供たちを集めた。プール横に立つまだ葉のない樹木が、まるで子供たちを守っているかのように覆っていた。子供たちはそうとは知らずに、無邪気に遊んでいた。 「はあ、小学生に戻りてー。」 そう嘆いたのはまつむだった。 「何の心配もせず、ただただ楽しく遊びてー。」 僕もそれに加勢した。 「受験勉強したくねー。」 「というか勉強したくねー。」 「部活しんでー。」 「帰宅部しんでー。」 「いやいや、しんどくないしんどくない。帰るだけやん。」 最初はそんな感じでふざけ合った。傍からみたら公園には子供しかいなかった。  その後、次第に話題は野球部の方へと移っていった。 「まつむって、ポジションは外野だったっけ?」 「そう基本的にライトを守っとる。」 「レギュラー?」 「いや、ちげー。ベンチすら危うい。」 「ああ、なんか前もそんなこと言ってたな。」  ――少し()が空いた。「いや、それはアウトやお」という子供の声が聞こえた。僕は耐えきれなくなり再び質問した。 「部活大変?」 「うん、大変。冬なんかずっと走らされっぱなし。」 まつむは笑いながら渋い顔をした。 「そうなんや。大変やな。体育の長距離走で音を上げているような俺じゃ、絶対死ぬな。」 「いやいや、でも慣れだって。お前も鍛えれば、どうにかなるって。」 「いや、でも鍛えないから。」 そうやってだらっと体を落とした僕にまつむは笑った。  また、ちょっと()が空いた。沈黙が間を制した。そこへ春風が吹き、梢が擦れた。 「はああー。疲れたー。」 まつむは天を仰いでため息をついた。調子の定まらないリズムに僕は無分別にも、 「部活やめたい?」 と聞いた。僕は言った矢先に、良くない質問をしたかもと思った。然しまつむは依然として笑顔で、 「いや、それは難解な質問やな」 と答えた。まつむの腿には幹の影が乗っかていた。  その後も僕等は真面目な話しからくだらない話しまで、一時間ぐらい話した。ミツメは退屈なのか、何度か欠伸をした。
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