5人が本棚に入れています
本棚に追加
つけ麺を食べ終えた僕等は、店を出て、近くの公園へ行った。つけ麺を食べて、そのまま解散でもよかったのだが、それだけだとなんだか寂しくて、コンビニでジュースを買って、公園のベンチに座った。
ベンチに座ると、まつむはコンビニ袋から菓子パンを取り出した。
「よく食うな。」
「いや、あれだけじゃまだ足りん。」
初春の陽光は暖かく、子供たちを集めた。プール横に立つまだ葉のない樹木が、まるで子供たちを守っているかのように覆っていた。子供たちはそうとは知らずに、無邪気に遊んでいた。
「はあ、小学生に戻りてー。」
そう嘆いたのはまつむだった。
「何の心配もせず、ただただ楽しく遊びてー。」
僕もそれに加勢した。
「受験勉強したくねー。」
「というか勉強したくねー。」
「部活しんでー。」
「帰宅部しんでー。」
「いやいや、しんどくないしんどくない。帰るだけやん。」
最初はそんな感じでふざけ合った。傍からみたら公園には子供しかいなかった。
その後、次第に話題は野球部の方へと移っていった。
「まつむって、ポジションは外野だったっけ?」
「そう基本的にライトを守っとる。」
「レギュラー?」
「いや、ちげー。ベンチすら危うい。」
「ああ、なんか前もそんなこと言ってたな。」
――少し間が空いた。「いや、それはアウトやお」という子供の声が聞こえた。僕は耐えきれなくなり再び質問した。
「部活大変?」
「うん、大変。冬なんかずっと走らされっぱなし。」
まつむは笑いながら渋い顔をした。
「そうなんや。大変やな。体育の長距離走で音を上げているような俺じゃ、絶対死ぬな。」
「いやいや、でも慣れだって。お前も鍛えれば、どうにかなるって。」
「いや、でも鍛えないから。」
そうやってだらっと体を落とした僕にまつむは笑った。
また、ちょっと間が空いた。沈黙が間を制した。そこへ春風が吹き、梢が擦れた。
「はああー。疲れたー。」
まつむは天を仰いでため息をついた。調子の定まらないリズムに僕は無分別にも、
「部活やめたい?」
と聞いた。僕は言った矢先に、良くない質問をしたかもと思った。然しまつむは依然として笑顔で、
「いや、それは難解な質問やな」
と答えた。まつむの腿には幹の影が乗っかていた。
その後も僕等は真面目な話しからくだらない話しまで、一時間ぐらい話した。ミツメは退屈なのか、何度か欠伸をした。
最初のコメントを投稿しよう!