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一時間も話すと、エネルギーの塊である高校生もさすがに疲れてくる。会話の休符がだんだんと長くなってきた。そうして、ちょっと変な間が空いた。――ふとまつむが口を開いた。
「――実は、俺、別れた。彼女と。」
「は――。」
僕は急に出たその重たい言葉に閉口した。然しまつむは僕にお構いなく話しを続けた。
「一月の中旬くらいに別れた。センター試験くらいの時かな。」
まだ驚きを隠せない僕は、センター試験というワードだけを掴んで、
「受験の、ために?」
と慎重に聞いた。
「表向きはね。でも本当は喧嘩して、それで別れた――」
僕はまた閉口した。どう返していいのか分からなかった。慰めればいいのだろうか。然し、僕等の間柄で慰めるのは、少し変だ。僕は頭を回してた。けれど時は待ってくれない。
これ以上、間は空けなかった。
「よし、受験勉強がんばるぞー。」
僕は空元気にそう言った。そしてまつむの表情を見る――。
まつむはしょげた顔を戻して、笑って「なんやそれ」と返した。僕はそれを確認して、安心して、再び「受験がんばるぞー」と拳を上げた。「よしゃー」とまつむも声を張ってそれに応え、拳を上げた。僕はよかったという安心感と同時に、何故だか頭上のミツメの目線が気になった。名の知らない草の茎が、風に乗って、僕の足元で止まった。
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