2/18
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
 風が冷たい雲ひとつない快晴の日、最後の一年が始まった。スズメが目の前に止まってお辞儀をしたようにみえた。今日は午前だけの始まり。その始まりは終わりを意味しているようで、匂いがいつもと違った。  だからといって、これといって、僕にはどうすることもできないため、いつも通りの道を、いつも通りの調子で行った。静かな畑道を走らせ、建ち並ぶことに意義があるような住宅街を抜け、一年中風鈴の鳴るうぐいす橋を渡り、朝から社会な大通りへと出た。大通りを東へ、北へ、東へ、主役は車、僕は小グモ。端をちょこちょこと、なるべく人間に会わないように通っていく。そうして大きな交差点で、チェーン店のレストランやファーストフード店がある交差点で、大きな通りは使わず、斜めに伸びる細い道を使って、山の方へと向かっていく。細いくせにいっちょ前に車通りが多い。だから、さらに細い道へと、逃げる。するとそれに続いて、逃げてくる学生達が数人、同士は歓迎だ。然しあくまで僕であることは主張したい。セイタカアワダチソウが立ち並ぶ。白い小花のナズナもあった。僕はあっちのナズナでいい。みんなは別を選んでくれ。  ミツメは今年も付いてくるようだ。僕と全く同じスピードで宙を浮く目玉。そしたらふと、 「今年は勝負だ」 と呟いたのが聞こえた。 僕は寒気を覚えた。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!