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 校門を抜けて、自転車置き場へママチャリを駐める。整然さも意味もないぎゅぎゅの自転車置き場に、僅かな隙間を探して、自分の自転車を鉄の塊とする。押し込めば押し込むほど、塊が似合ってくる。同じく塊としている制服がちらほらある。  それから中庭を通り抜ける。蕾をつけた桜はまだ裸、その隣には寂しく生い茂る楠。その向こう、下駄箱の近くには鯉が泳ぐ小さな池。反対側には先生たちの車が並ぶ。  リュックを鳴らさず、下駄箱へと入っていく。砂と汗が混じったような匂い。そこに僕も同じく匂いを置き、校舎へと入っていく。階段を上る前に、確認。今日の最初で最後の仕事。学生がきゃっきゃしながら立ち並ぶ前で、自分のクラスを確認した。  ――「3―2」、まつむとはまた同じクラスだった。啓仁は隣の「3―1」だった。まつむがいることに少しだけ安心した。  新しい教室へと入った。池が目の前だった。自動販売機も目の前だった。クラスの真ん中辺りに、まつむと、そしてちーざもいた。あの子も同じクラスか。僕はまたさらに安心した。  理系文系で完全にクラスが別れているため、前も同じクラスだったやつが多かった。それでも馴染みのない者たちもやはり多かった。異色な光景。様々な色が無秩序にある。それは形のないコラージュのようだった。僕はさっそくまつむに声をかけた――。  こうして最後の一年がはじまった。
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