1日目

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1日目

高校二年生の夏休み。俺は海の家で一週間のバイトをすることになった。東京から新潟までの交通費と飯付き、さらに海の家に併設された宿舎に泊まっていいという好条件だ。 一日目は金曜日ということもあり、お客さんは多くなかったのでオーナー夫妻から仕事の内容を一通り教わると午後は海で遊ばせてもらった。遊泳可能範囲を端から端まで探索し、太陽が水平線に沈むまでたっぷりと海に入っていた。 その日の夜、風呂から上がり浜辺で涼んでいた俺は西条真夏に出会った。 「こんにちは、西条真夏、中学三年生です。」 まだ幼さの残った透き通るような声で突然話しかけられ、困惑していると彼女は自己紹介を続けた。 「両親がここのオーナーをやってて夏休みの間だけお手伝いしているんです。お兄さんはバイトですか」 月の光を受けて茶色がかったミディアムショートの髪がブロンドに輝き、海で働いているという割には色白い肌が透明感を帯びる。パッチリと開いた二重はウサギのような人懐っこさを彷彿させる。 「俺は島田優希、今日から1週間ここでバイトする予定。」 「お兄さんなんでバイトしてるの」 彼女は首を傾げて聞いてくる。 「お金が必要だからだよ」 多少口ごもりながらも、最もらしい理由を説明した。しかし彼女の顔に納得した様子はなく、疑念の表情を浮かべていた。 「でもさ、お金が必要なだけだったら東京のほうが稼げるんじゃない。なんでわざわざこっちまで来たの、本当にお金稼ぎのためだけ?」 あくまでも純粋な疑問として、けれども鋭利な刃物を突きつけるような内容を彼女は発した。そよ風程度の陸風が肌に刺さり、寒さと恐怖をもたらす。 「ま、いいや。お兄さんおもしろいね、1週間だけだけどよろしく」 言葉に詰まっていると彼女は何がおもしろいのか笑顔になるとこの場を遠ざかっていった。 辺りはいつのまにか凪になり、体は熱を取り戻す。 月に照らされ静かに波打つ海が恐ろしく見えた。
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