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「悠人…。指輪、ありがとうね。ちゃんと受け取ったよ。
でもプロポーズの言葉…聞きたかったな。」
涙で真っ赤に瞳を腫らしながら、由紀子は眠り続けている悠人に話しかける。
その左手の薬指にはダイヤの指輪が光り輝いている。
悠人が病院に運び込まれた日。両親は由紀子にすぐに連絡した。
新宿で悠人を待っていた由紀子はすぐに病院に向かった。
手術が終わり、病室のベッドで眠る悠人の横で衣服を片付けていると両親はあることに気づいた。ジャケットの内ポケットに指輪が入っていたのだ。それを取り出すと両親は由紀子にその指輪を渡した。
由紀子は指輪をはめると、額を当て、小刻みに肩を震わせた。
「私は…もう、いいのかなって思います。
彼をもう楽にしてあげたいなって思いました。」
由紀子は悠人の手を優しく握りながら、そう答えた。
両親はベッドに向かい、悠人の顔を見つめる。
悠人は額にしわを寄せながら、苦しげに顔を歪ませていた。
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