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電車が隣駅のホームに到着して、寄りかかっていたドアが開く。 大学の最寄りは次だったけれど、弾かれるように電車を降りてスマホの神野の電話番号を呼び出した。 祈るような気持ちで耳をすます。 数回のコール音の後、ひどく懐かしい声がきこえた。 「ハル…!?」 「…神野」 「マジかよ…どうした…?」 信じられないとでも言うように小さく震えたその声に、じわりと視界が滲んだ。 心の奥に閉じ込めていた気持ちが溢れて、精一杯の言葉になる。 「神野に…会いたい」  同じタイミングでホームに流れたアナウンスが、呆気なく僕の声をかき消した。 「何て? 後ろがうるさくてよく聞こえねー……」 「会いたい!」  僕の大声に、横を通り過ぎた女子高生グループが振り向いてくすくすと笑う。 でも今は、誰に何て思われようがどうでも良かった。 「神野に、会いたいんだよ……!!」  振り絞った声と同時に、涙がこぼれた。 呆れるほど自分勝手だって、そんなこと百も承知だ。 神野の中ではとっくに無かったことになっているかもしれない。もう僕に会う必要なんて、少しも無いって思ってるかもしれない。 それでも。 もしもう1度会えたら、今度こそ自分の気持ちに正直になりたいって、そう思った。 いつだってそばにいてほしい。 誰にも代わりなんてできない。 僕にとって神野はやっぱり、他の誰よりも『特別』なんだ。 「…俺も」 掠れた声が耳に流れ込む。 「ハルに、めちゃくちゃ会いたい」 「…っ…」 「会いに行っても…いいか?」 涙は後から後からこぼれて止まらなくなって、言葉がうまく出てこなかった。 神野は電話の向こうで、黙って僕が落ち着くのを待っていてくれた。
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