79人が本棚に入れています
本棚に追加
3
それからだ。
CDを借りて時々一緒にライブに行くようになって、急速に仲良くなった。
確かに、知れば知るほど神野は変な奴だった。
いつのまにか僕を「ハル」と呼ぶようになった神野を、お返しに「アキオ」と呼んでみたら「名前で呼ぶんじゃねえ」と怒られたり。
不公平な気がして悔しかったから、ずっと苗字で呼び続けてやると決意した。
放課後はよく、用もないのにファーストフード店に入り浸っては飽きずに話をしたものだ。
「ハルー、アルバム聞いたか? 2曲目のリフすげーカッコよくね?」
「『Don’t Leave Me Alone』だっけ? えーと…すぐ出てこない。神野、細かいとこまでよく聴いてるよな」
「当たり前だろ、バカ。ていうか今聴け」
プレイヤーに繋げたイヤホンを片耳にはめると、問答無用でもう片方を僕の耳に突っ込んでくる。
痛いカップルみたいだ。苦笑いしかけたけれど、神野の真剣な顔に余計な茶々を入れるのはやめておいた。
イヤホン越しにドラムの爆音が耳元で弾ける。ザリザリとした砂のように不穏なノイズの中に、星屑みたいに流れるギターのフレーズ。
暴力的なのにどこか儚くて心が引っ掻かれたように熱をもつ。
「あ。これ好きだ」
「だろー?」
コーラ片手に神野はなぜか得意げだ。割と大人びた顔立ちなのに、時々子供みたいな反応をするのがなんだか微笑ましい。
小さく鼻歌を口ずさんでいるその顔をこっそり観察してみる。
茶色の髪は地毛なんだろうか。眼光は鋭いけど、意外と睫毛が長い。すっきりと通った鼻筋とか、少し薄めの唇とか、整った顔してるんだから黙ってたらモテそうなのに。
「……何見てんだよ」
あ。ばれてた。
怪訝そうに僕を見るから「別に」と笑ってごまかしておいた。
その時、テーブルの横を通り過ぎようとした、同じ高校の制服の集団の1人が立ち止まった。
最初のコメントを投稿しよう!