78人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
4
「おー、須和と神野じゃん。何してんの」
降ってきた声に顔を上げると、同じクラスの村瀬直樹が屈託無い笑顔でこちらを見下ろしている。
いつも人の輪の中心にいて、持ち前の明るさと人懐こさがそのまま顔に出ているような奴だ。「陽」のオーラがすごく眩しい。
神野が興味無さそうにコーラを啜っているから、イヤホンを外すと僕が代わりに答えた。
「ちょっとね……。暇だったから時間つぶしてた」
「そっか。このあと俺らカラオケ行くけど、暇ならお前らも来る?」
「俺はパス」
秒殺で断る神野に、僕の方が固まってしまう。
「お前はそう言うと思った。須和は?」
特に気にする様子もなく、村瀬は僕に視線を向けた。
こんな時一言行かないと言えば済むのに、断り方をあれこれ考えてしまう自分が情けない。
「えーと……」
「あ。須和もパス」
神野が代わりに素っ気なく答える。
「なんだそりゃ」と村瀬は可笑しそうに笑うけど、僕は焦りと気まずさのあまり変な汗が出そうだった。
「ごめん。誘ってくれてありがとう」
「あはは、全然いいよ。じゃあな」
村瀬は軽く手をあげると、入り口で待っていた集団と一緒に店を出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!