後書き

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「『人生』とは、読んで字の如く『人間の生き様』のことです。そして『人間』とは、自分自身だけでなくその周りを取り巻く一切の存在、それを引っ括めて称した者と思っています。自分のためだけに生きること、それは『人生』とは言えません」  二人は私の話に真剣に耳を傾けていました。その姿勢に恥じることがないよう、私はこう結論付けました。 「貴女方は互いの為に生きている。それは人でなしには決して出来ない所業です。安心して下さい。貴女方は立派な人間ですよ」  二人は私の結論に満足したようで、そこからは重々しい空気になることもなく、いくつか世間話をして終了しました。メモを仕舞って椅子から立ち上がり、店からおいとましようとした、その時でした。  私はその瞬間、二人にあることをどうしても確かめたくなり、去り際こんな風に聞いてみました。 「すみません、一つだけ聞きそびれたことがありました。……は今、幸せですか?」 「……ええ、とても」  こうして無事取材は終わり、今こうしてその内容を報告している次第です。しかし私としたことが、最後の質問で失敗をしてしまいました。何故『貴女達』ではなく、『貴女』と聞いてしまったのでしょうか。  二人それぞれの意見を聞いておくべきでした。これまでは気配の波長から、何となくどちらが話をしているのか分かりました。  しかし最後の質問の時だけは、二人のうちどちらが話していたのか分かりませんでした。一体、どちらが返答してくれたんでしょう か。今更引き返して聞き直すのは、恥ずかしいから止めておきますが。  しかし、あのような生き方も存在するんですね。二人で一つの人生を歩むとは。きっと彼女らは二人でいるからこそ、人間でいられるのでしょう。  何だか羨ましい気がします。何せ私も人間に……いや、この話はまたの機会にしておきましょう。時間が足りなくなっちゃいますからね。  さて、この辺りで締めとしましょう。今回の話、お楽しみいただけましたでしょうか。それでは、またお会いする日まで。
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